「その人らしく生きる」を
在宅医療が実現できるように。
新型コロナウイルスの流行で認知を広げた「在宅医療」。本来は地域の医療体制で見守られながら、入院ではなく自宅で治療を続けることを指している。この国では、昭和40年前後から自宅で亡くなる人が減り、病院で亡くなる人が増えた。圧迫する医療費を背景に、国は在宅医療の推進を求めている。クオールはいち早くそれに応え、全900店舗のうちすでに約9割もの店舗が在宅医療に対応している。在宅医療に関わる主なメンバーは、地域の医師をはじめ、看護師、ケアマネージャー、そして薬剤師だ。薬剤師は自宅、または高齢者施設などを訪問し、外来では踏み込めない在宅ならではの深い服薬指導を行う。
在宅医療の利点は、患者さまの生活の場を知れることだ。患者さまの日常生活の支援に近いところで、残った薬についてのアドバイスや、その方に本当に合った薬の提案を行うことができる。千島は語る。「その方がいかにその方らしく、その土地で人生を過ごされるかが大事。できるかどうかは、医師ではなく関係職種の私たちの仕事。病気は医師が診るが、患者さまの生活は私たちが観る」。薬剤師の細やかな気遣いや洞察力は光となって、これまで見えなかった患者さま一人ひとりの暮らしを照らしはじめている。
クオールの薬剤師を、
地域医療の輪の中へ。
在宅推進本部の役割は、社内の教育、店舗設備の整備から営業戦略まで多岐に渡る。外部の発信先は幅広く、クオールが在宅医療を行っていることを地域の医師、看護師、ケアマネージャー、介護施設、自治体などにイベントの企画などを通して伝えている。「まずは私たちの認知を獲得していく。地域医療の輪の中で、薬剤師が必要であることを当たり前のように認識してもらわなければ」と鈴木は語る。
社外への働きかけだけでなく、在宅推進本部は社内への啓発活動も同時に行う。最近では、広報部と連携して、在宅医療についてのノウハウを社内報に掲載した。「患者さまの中には、病院や薬局に無理して通っている方もいる。必要な方には店舗の薬剤師から在宅の提案を」。
在宅医療には万全な設備体制が欠かせない。無菌調剤室があるか、移動のための社用車があるかも時には重要な条件だ。「立地的環境、人的環境、物理的環境の3つが大事」と千島は語る。在宅医療の設備に特化したハイグレードな店舗もスタートした。目下の課題は、個人と組織の質を上げることだ。当たり前のように無菌調剤の薬剤調製ができる、誰でも訪問ができる環境が整ったら次は在宅に関わる薬剤師たちが“こうしたい”と発信できるレベルを目指す。「在宅医療に強いクオール」の一番の発信者は、現場の薬剤師一人ひとりなのだ。
いつかは全員が在宅医療に関わる。
選ばれる薬剤師を目指して。
在宅医療において薬剤師が求められていることは、決して特殊なことではない。外来できちんと患者さまに向き合える薬剤師なら、在宅でもきちんと対応ができる。「いい薬剤師って、探偵みたいだと思う。処方せんにはお薬の名前しか書いてない。ロキソニンという薬が出たなら、どこが痛いんだろうと本人を観察して、想像できるかどうか」と千島は言う。会話の中から引き出す力も必要だ。人を見る力、つまり観察力や想像力、最終的には人間力が決め手となる。
求められるものに大きな変わりはないが、得られるものは違ってくる。生活を知り、家族に会える在宅では、服薬指導の時間が自然と長くなる。鈴木は語る。「25年も前のことなのに、いまだに覚えている患者さまがたくさんいる。それほど深く関われるということを、ぜひ感じてほしい」。
これから入社する薬剤師は、全員が在宅医療に関わる可能性がある。薬を渡すだけの薬剤師なら、いつか機械に仕事を取られる日が来るだろう。しかし、患者さまその人が望むことをくみ取って叶えられるのは、人である薬剤師にしかできない。患者さまのためにできることを一人ひとりが模索し、全員が選ばれる薬剤師となるのが、クオールの目指す未来だ。
千島は言う。「今はまだ、〇〇さんだからできる在宅。クオールだからできる在宅に変えていく」。