医療は伸びていく産業。
DX・AIが新しい切り口をつくる。
高齢化率がピークとなる2040年。人口の30%以上が高齢者となり、70歳までが労働人口と捉えなくては国が成り立たなくなる。医療保険の大きな負担を見込んで、セルフメディケーションでまかなえる症状は保険適応外となる日も近い。健康寿命を延ばすことは、まさに急を要する課題のひとつだ。
「厚生労働省が実現しようとしているのは、データヘルス集中改革プラン」と話すのは樫尾。クオールが2040年問題に対して挑むためにつくられたDX・AI推進室メンバーを牽引するひとりだ。「検診の結果や処方せんの内容がナショナルデータとしてまとめられ、健康を個人ではなく全体が管理できるようになる。患者さまが納得してデータを預けていただけたら、薬局側でも管理ができる」。
電子処方せんには電子カルテの整備が必要だ。しかし医療機関の電子カルテの導入はまだ6割に留まる。薬局だけでなく医療分野のIT化のために様々な企業が連携を図っている。「医療はまだまだIT未開拓の分野。そして日本を背負う分野であることは間違いない。社会の期待に応えながら、まったく新しい発想でビジネスモデルを増やしていきたい」と樫尾は語る。10年後のクオールは、思いもよらぬ形に進化しているかもしれない。
デジタル化で縮まる、
患者さまと薬剤師の距離。
2020年には、日本で初めての自動薬剤ピッキング装置、ドラッグステーションを導入した。機械が外用薬や漢方薬も含む薬を選んで取り出し、画像や重量での監査も行なうので薬剤師は最終的なチェックのみを行う。この装置の普及で、薬剤師はより人的な仕事に注力することができるようになる。
オンライン服薬指導も、クオールのデジタル化プロジェクトのひとつだ。患者さまの時間的なニーズに応えると同時に、AGAや低用量ピルなど人に知られたくない相談ができるのもオンラインのメリットである。患部の状態を確認するにはスマートフォンのカメラを使い、対面と変わらないコミュニケーションが可能だ。喘息やアトピーなど、継続的に薬を必要とする方にはロッカー受け渡しや配送の需要も高い。
「オンライン化が進めば、場所は関係なくなる。あえてクオールを選んでいただけるようにならなくては」と山﨑は語る。スポーツファーマシスト として、アスリートにドーピング対策や栄養指導を行った経験もある人物だ。「アスリートにアンケートをとると、オンライン服薬指導に興味のある方が7割。若い世代にはニーズがある」。デジタル化が進めるのは業務の効率化だけではない。最も大切なのは、人と人とのつながりを深めていくことなのだ。
医療×ビジネスで、新たな価値を創出する。
次世代薬局の先駆者となる。
オンライン化や機械化が進む一方で、薬局の在り方が変わろうとしている。持病がなくても人と薬局の関係があることは、クオールの目指す姿だ。この薬局の未来を後押しするのが、企業とのコラボレーションである。
都市部の店舗では、高齢者向けの体操イベントなどを主催している。提携企業のひとつであるベンチャー企業にはシニア層へのゲームを普及させるべく生まれた企業もある。ゲーム画面を見ながらタイミングを予測して手を動かす行為は、脳科学的にも認知症予防に良いという。リズム型のゲームイベントは好評だ。
また高齢者居住施設などへ服薬指導に向かう薬剤師に、連携しているローソンのスタッフが同行して商品を販売するサービスが始まっている。入居者の方々に大変好評であり、人口の減少や高齢者の独居など、超高齢化という日本社会の課題に対するクオールの重要な取り組みとなるかもしれない。
電子処方箋、AIによる自動発注などで、薬剤師は今後ますます他のサービスに力を割くことができるようになるだろう。「社会のニーズに応えつづけていくことがクオールの継続につながる」と樫尾は話す。デジタル技術の進化も、薬剤師一人ひとりのホスピタリティの向上も、すべては患者さまのためだ。